マーケットプレイス型プラットフォームにおける「中抜き」を避ける方法

この記事はSharetribeが運営するMarketplace Academyに掲載された “How to discourage people from going around your payment system“(著者 : Juho Makkonen)を翻訳のうえ、加筆修正したものです。

前回の記事では、「トランザクションを所有(代金決済をプラットフォーム内で完結させる)」し、各取引から手数料を徴収する「取引手数料」がマーケットプレイス型プラットフォームにとって最良の課金モデルであることを説明しました。

取引手数料モデルは、プラットフォーム上で流通するすべての取引から収益をあげることができますが、一方でユーザーに対して多くの価値を提供し続ける必要があります。プラットフォームの利用に充分な価値を見いだせない場合、ユーザーが手数料を回避するためにプラットフォームを利用しなくなる、いわゆる「中抜き」が発生します。中抜きは多くのプラットフォームが直面する問題です。

取引プロセスに付加価値を与えて中抜きを回避

どうすればプラットフォームの中抜きは回避できるでしょうか?マーケットプレイス型プラットフォームには、売り手(出品者)と買い手(顧客)という二種類のプレイヤーが存在し、プラットフォームは双方に対して付加価値を提供する必要があります。
この記事では、売り手と買い手の双方に付加価値を提供し、中抜きを回避する方法を紹介します。

売り手が個人の場合 : 信頼と安全を提供

売り手が個人の場合、信頼と安全を提供することが最良の付加価値となります。人々は見知らぬ人を信頼することをためらいます。他人に車や電動ドリルをレンタルする場合、相手が盗んだり、捨てたり、壊したりしないようにするにはどうすればよいでしょう?プラットフォームが「信頼できる仲介者」として行動することで、売り手が抱くこの不信感を払拭する必要があります。

保険

レンタルマーケットプレイスであれば、
 プラットフォーム内で支払いを行った取引については、商品の盗難や破損で生じた損害を補償する
という条件で保険を提供することができます。

CtoCのカーシェアリング・マーケットプレイスであるTuroは、100万ドルを上限とした保険を提供しています。また、自動車への損害だけでなく、第三者からの損害または負傷についてもカバーしています。カメラや音響機器などを取り扱うKitSplitでは、1万ドルを上限とした保険を提供しています。また、車の相乗りマッチングサービスであるBlaBlaCarは、競合他社とは異なりライドシェア向けの保険料を徴収しています。

デポジット(預かり金)

保険を提供する余裕がない場合、または適切な保険商品を見つけることができない場合、顧客からデポジットを預かることもできます。顧客は予約時に一定金額をプラットフォームに支払い、返却時に商品が破損していない場合、返金を受けることができます。

筆者はフランスのカーシェアリング・プラットフォームであるDeways(すでにサービス終了)で借りた車に擦り傷を作ってしまい、デポジットがどのように機能するかを偶然体験することができました。Dewayはデポジットから修理代金を差し引き、残った金額が返金されました。手続きはスムーズでしたが、デポジット金額はかなり高額でした。ユーザーは高額すぎるデポジットを前払いすることに抵抗感を覚えますが、金額が低すぎると重大なトラブルが発生した際に補償できなくなります。適切なデポジット金額を設定することは、プラットフォーム運営者にとってかなりの難題といえます。

利用規約

通常、顧客は予約時にプラットフォームの利用規約に同意する必要があります。利用規約にトラブル発生時の扱いについて明記しておくことにより、法的措置が必要となった場合の手続きを取りやすくなるなど、一定の効果を見込めます。

仲裁

レンタルではなく物販系のプラットフォームの場合、販売後に出品者が商品の状態について心配することはありません。しかし、

  • 商品が届かない
  • 到着時に破損していた

などと顧客が主張し、返金を要求したり、課金を取り消すようカード会社に連絡するなど、別の問題が生じることがあります。これは出品者にとって大きなリスクです。取引の当事者間の紛争について、プラットフォームが仲裁に入り調停することにより、このリスクを低減することができます。また、Paypalの売り手保護制度など、決済代行業者が提供するサービスを活用することで、プラットフォームが仲裁に際して金銭的リスクを負わないようにすることもできます。

相互レビュー

相互レビューも信頼と安全を提供する方法の1つです。eBayをパイオニアとして、ほとんどのマーケットプレイス型プラットフォームでは取引完了後に、売り手と買い手が相手の評価を行います。低評価はプラットフォームにおける以降の活動に支障をきたすため、双方に適切な行動をとるインセンティブが働きます。

相互レビューには、「販売機会を増やす」というもう1つのメリットもあります。多くの研究では、評価の高いeBayの売り手は、評価が低いかレビューのない類似製品の売り手よりも、高い価格で商品を販売できることを示しています。Airbnbのホストは通常​​、開始当初は低い価格で部屋を提供し、高評価レビューを集めつつ価格を上げていきます。レビューはプラットフォーム上で決済した取引に対してのみ投稿できるため、取引に付加価値を提供する優れた方法といえます。

決済サービス

サービスの売買を仲介するプラットフォームでは、決済サービスの提供自体が売り手にセキュリティを提供することがあります。Uberはその代表例です。タクシー運転手は車内で現金を扱うため、強盗の標的になりがちです。Uberを使用すると、金銭のやりとりはオンラインで行われ、現金を携帯する必要がなくなります。

売り手がプロの場合 : ツール

売り手がプラットフォーム上での取引で生計を立てている(または収入の大半をプラットフォームで得ている)法人または個人事業主である場合は、上記以外の方法でも価値を提供する必要があります。これら「プロ」の売り手が多いプラットフォームでは、掃除、ドッグシッター、ギターの指導などの取引が繰り返されます。顧客は気に入った売り手を見つけると、その売り手が提供するサービスのリピーターになる可能性が高くなります。

最初の取引はプラットフォームを介して行われますが、以降は往々にして他のチャネル経由で取引が行われます。売り手と顧客の間で一度信頼関係が成立すると、プラットフォームが提供する「信頼と安全」は不要となります。お互いに連絡を交換して直接取引すれば、取引手数料が不要なため売り手は安価にサービスを顧客に提供できます。これは売り手と顧客の双方にとって魅力的なオプションです。

プラットフォームは売り手と顧客の出会いの場として、最初の取引を仲介することに特化してもある程度は成功できます。しかし、売り手に付加価を提供することにより、2回目以降の中抜きを回避することも可能です。

作業の自動化ツールを提供

プロの売り手に付加価値を提供するには、プラットフォームが売り手にとってのSaaSツールになることが有効です。単なる顧客獲得の場ではなく、売り手がサービスを提供する際に発生する様々な業務を自動化するツールを提供するのです。

フリーランサーのマーケットプレイスであるUpWork(旧oDeskおよびElance)はこの手法を用いたプラットフォームの代表例です。フリーランサーが新規契約を獲得すると、契約書の締結、補償内容の説明、成果物の納品、税金の支払いや会計処理など、様々な業務が発生します。UpWorkは、フリーランサー向けのスムーズなワークフローを作成し、これらすべてのステップを自動化しました。フリーランサーは多くの時間を節約できるため、手数料を支払ってでもUpWorkを使い続けます。

プラットフォームは、様々な方法で売り手に付加価値を提供することができます。決められた日時に提供する必要があるサービス(美容師、家事、ベビーシッターなど)を扱うプラットフォームでは、スケジュール管理機能を提供することで売り手をサポートできます。Etsyのような商品の配送を伴うプラットフォームであれば、在庫管理や配送代行サービスは重宝されるでしょう。
売り手が手数料以上の価値を見出すようなツールを提供しましょう。プラットフォームはビジネスプロセスの一部となり、売り手にとって欠かせない存在となります。

顧客にとっての付加価値 = 摩擦の解消

顧客にとっては、「取引をスムーズかつ簡単に行える」ことがプラットフォームを使い続ける最大の理由となります。手続きの簡略化や支払いに関する不安の解消、レビューシステムによる自身の信頼性のアピールなど、様々な方法でプラットフォームを利用することのメリットを顧客に伝える必要があります。

支払い手続きをシンプルに

できるだけ簡単に支払いできるようにしましょう。支払い手続きが簡単であればあるほど、人々はより多く商品を購入する研究結果があります。支払い手続きが面倒というだけで、顧客は購入をあきらめる可能性があります。

AIrbnbの創業者であるBrian Cheskyは、自身がAirbnbを利用した際の経験から、早期にオンライン決済システムを実装しました。彼はホストに宿泊料を支払う際に、財布に充分な金額を持ち合わせていないことに気づきました。そのため、ATMまで出かけてお金を引き出す必要があり、ホストとの信頼関係が壊れてしまいました。Airbnbがオンライン決済を提供することにより、この問題は解消されました。ゲストとホストの間でお金の話をする必要がなくなったのです。Uberの利用者も同様のメリットを享受しています。持ち合わせがないことに気づいて、運転手にATMまで連れて行ってもらうようなことは起きないのです。

事前支払いに関するリスクの低減

事前に支払いを行う場合、顧客は売り手が当日現れなかったり、商品が届かないなどのリスクを負います。プラットフォームが取引の仲介者として、顧客からこのリスクを取り除く必要があります。「エスクロー」サービスはその1つの方法です。代金をプラットフォームが一時的に預かり、取引完了後に売り手に支払います。

なお、エスクローサービスは国による規制があります。事前に必ずお住まいの国および業界における法律を確認してください。

エスクローを提供しない場合には、

  • カードの仮売上・実売上
  • 買い手保護プログラム

などを利用できます。前者は、「取引成立時にはカードの仮売上のみ行い、取引完了後に実売上を行う」というものです。ほとんどの場合これで充分ですが、仮売上から実売上までの期間が長いと、実売上処理に失敗するリスクが大きくなります。詳しくは、シェアリングエコノミーやマッチングサービスにおける「仮売上の30日問題」を参照してください。後者は、Paypalが提供する「買い手保護制度」などを利用する方法です。提供された商品・サービスがニーズや期待を充たしていない場合、一定の条件の下に補償を受けることができます。

レビューによる信用の蓄積

良い評判を築くことは、顧客の観点からも重要です。Airbnbのホストは、予約リクエストの審査にレビューを使用し、肯定的なレビューのある人からの予約のみを受け入れる場合があります。信頼できるゲストとしてホストに認められるには、Airbnbを通じて予約を行い、良いレビューを蓄積する必要があります。

コミュニケーション戦略

取引プロセスで充分な価値を提供出来ない場合にも、中抜きを回避できるいくつかの方法があります。しかし、それらはいずれも確実に効果が上がるものではなく、場合によっては悪影響すら及ぼします。そのため、利用には注意が必要であり、あくまで付加価値を提供したうえで補完的に用いることをおすすめします。

ユーザーにアピールする

1つめのアプローチは、

  • ユーザーが取引手数料を回避するとプラットフォームを維持できない
  • 取引手数料を回避が発覚したユーザーは会員資格を剥奪する

など、プラットフォームが直接ユーザーにアピールすることです。ただし、ユーザーからの反感を買うこともあり、コミュニティとしてプラットフォームを育てたい場合には良い方法とはいえません。

ユーザー間のコミュニケーションを制限する

取引が行われる前にユーザー間で連絡先などを交換することを難しくすることもできます。Airbnbは、ユーザー間のプライベートメッセージに記載された連絡先情報(メールアドレスや電話番号など)を削除します。(ただし、電話番号を文字で記入するなど、この制限を回避することは可能)AirBnbは、連絡先交換禁止はユーザー保護のためと主張していますが、中抜きの回避が本当の目的であることは明らかです。また、BlaBlaCarでは、取引前のプライベートメッセージのやりとりを許可していません。すべての質問はプラットフォーム上で公開されます。

もちろん、メッセージングシステムを提供しないこともできます。しかし、多くの場合、顧客は事前に売り手に質問したうえで購入を決断します。コミュニケーションの過度な制限はプラットフォームの利便性を低下させ、取引量の低下を招くためおすすめできません。

売り手と利益を共有しよう

プラットフォーム事業者にとって、売り手(出品者)はパートナーです。売り手が成功することで、プラットフォームも成功を収めることができます。売り手に充分な価値を提供せず、利益を独り占めするプラットフォームは最終的には失敗します。「プラットフォームの成功 = 自らの成功」と信じる売り手を集めることが、プラットフォームの真の成功には必要になります。

プラットフォームと売り手の利害を一致させる一つの(そしておそらく非常に急進的な)方法は、売り手にプラットフォームに出資してもらうことです。プラットフォームの運営母体となる協同組合を設立し、売り手が出資のうえ組合に加入するのが最も自然な組織形態となります。組合は民主的な組織形態であるため、意思決定に時間がかかるなどのデメリットはありますが、プラットフォームと売り手の利害を一致させるという点においては、これ以上の方法はないでしょう。この手法をとりいれた例としては、Platform Cooperativism というムーブメントが参考になります。

共同組合方式の他には、プラットフォーム運営企業の株式の一部を売り手に割り当てる方法もあります。人気のコンテンツ・コミュニティサイトであるRedditは以前、資金調達ラウンドの10%(合計500万ドル)をブロックチェーンを利用した暗号通貨でユーザーと共有する計画を発表しました。現時点ではかなり特殊な手法ですが、テクノロジーの進化とともにこのような方法で利益を売り手と共有する企業が出てくると思われます。

まとめ : 価値を得るために価値を提供しよう

プラットフォームが決済を含む取引全体を管理し、そこから手数料を得る場合は、取引の一連のプロセスにおいて出品者と顧客の双方に充分な価値を提供する必要があります。出品者が個人の場合は信頼と安全を、企業や個人事業主向けにはビジネスを支援するツールを提供することにより、中抜きを回避することができます。

売り手(出品者)はパートナーです。ユーザー間の連絡を制限するなど、中抜きを防止するためにユーザーの行動を厳しく取り締まることもできますが、ユーザーと信頼関係を築くことが難しくなります。プラットフォームと売り手の利害を一致させ、利益を共有できるような仕組みを取り入れる方がうまく機能でしょう。