マーケットプレイス型プラットフォームのプライシング戦略

この記事は、Sharetribeが運営するMarketplace Academyに掲載された “How to set pricing in your marketplace“(著者 : Juho Makkonen)を翻訳のうえ、加筆修正したものです。

前回の記事では、マーケットプレイス型プラットフォームにおける「中抜き」を避ける方法を説明しました。この記事では、プラットフォームにおける取引手数料のプライシング戦略について説明します。

プライシング(価格設定)は、プラットフォーム事業者にとって最も重要な意思決定の1つです。これは、プラットフォームが取引手数料を採用する場合に特に当てはまります。取引手数料は取引額の何%を請求するのが最適でしょうか?「高ければ高い方がよい」と考えもありますが、Benchmark Venturesでマーケットプレイスの専門家として活動するBill Gurleyは、「A Rake Too Far:Optimal Platform Pricing Strategy」で正反対のことを主張しています。

ビジネスモデルと同様、1つのプライシング戦略がすべてのプラットフォームで機能することはありません。この記事では、プラットフォームのコンセプトに基づいて正しい戦略を選択できるよう、取引手数料の価格設定に影響を与える要素について解説します。

他のプラットフォームの取引手数料

取引手数料の設定について大まかに把握するため、有名プラットフォームの手数料率を見てみましょう。 UberFiverrLyftPostmatesのようなサービス系プラットフォームでは、売上の20%程度の手数料を請求しています。「ほとんどのプラットフォームにとって、20%が最適な手数料率である」と主張する人々すらいるほど、手数料率20%は多くのサービス系プラットフォームで採用されています。

一方、モノの売買プラットフォームでは、手数料率はぐっと低くなります。最も低い部類のEtsyで3.5%、eBayAmazonでも10%程度に留まります。また、スペースシェアやレンタル系プラットフォームの手数料率はよりバラエティに富んでおり、Airbnbで平均11%、カーシェアリングのTuroでは約25%の手数料を請求しています。

Bill Gurleyは、成功したプラットフォームの取引手数料率一覧を公開しています。OpenTableの1.9%からShutterStockの70%まで、各社が設定している手数料率には様々なバリエーションがあることがわかります。

ちなみに、筆者が運営するSharetribeの利用者のうち、取引手数料モデルを採用する約5,000のサイトを調べたところ、手数料率の平均値は9.2%、中央値は10%でした。

また、そのうち最も成功している10件のプラットフォームの平均手数料率は12.4%(最高30%、最低5%)でした。これらを踏まえると、手数料率を設定するうえで「10%」という数値は頭に入れておいた方がよいでしょう。

もちろん、Bill Gurleyの取引手数料率一覧を見ればわかるとおり、何も考えずに平均値を採用すれば機能するというわけではありません。自身のプラットフォームの特性に基づき、いくつかの要因を考慮して手数料率を設定する必要があります。

取引手数料に影響を与える7つの要素

手数料率の決定に影響を与える主な要素は以下の7つです :

  1. 限界費用
  2. 競合チャネル
  3. ネットワーク効果
  4. 売り手(出品者)の差別化
  5. 取引単価と取引数
  6. 質 vs 量
  7. 誰が手数料を支払うのか?

1.限界費用

手数料率を決定する上で、最も重要なのは限界費用です。売り手の利益率が低いビジネスでは、多くの手数料を請求することはできません。限界費用が高いケースの代表例として、レストラン予約プラットフォームであるOpenTableが挙げられます。OpenTableにおける売り手はレストランです。レストランにおいて顧客が支払う代金の大部分が、食材費、従業員の給与、賃料、その他の費用に充てられます。競争が激しいレストランビジネスの利益率は非常に低く、OpenTableに残された取り分はわずかです。Etsyにも同じことが言えます。商品の作成には材料費がかかりますし、商品の発送も必要です。競争も激しいため、利益率は低く抑えられます。

一方、ストックフォト(写真素材のダウンロード販売)など、デジタルコンテンツのマーケットプレイスの限界費用は非常に低いです。デジタルコンテンツは一度作成したら、追加費用なしで何度でも販売できます。一般的なストックフォト・マーケットプレイスでは、写真素材が売れるたびに約30%の販売手数料がプラットフォームの収入となります。

限界費用が異なる様々な商品を扱うプラットフォームでは、製品カテゴリー毎に異なる手数料率を適用することをおすすめします。eBayとAmazonはその代表例で、Amazonでは製品カテゴリにより6%〜45%の取引手数料を適用しています。

2.競合チャネル

売り手が商品やサービスを販売する他のチャネルについても考慮する必要があります。もし売り手の販売チャネルがあなたのプラットフォームのみであれば、あなたは非常にニッチで、誰も気づいていないようなマーケットを見つけたということです。ニッチマーケットを独占することができれば、より高い取引手数料を請求できます。これは、カテゴリー特化型プラットフォームの運営をおすすめする理由の1つです。

しかし、ほとんどの場合では、すでに他の販売チャネルが存在します。売り手にあなたのプラットフォームを使ってもらうには、他のチャネルよりも多くの価値を提供する必要があります。例えばレストランでは、OpenTableがサービスを開始する前から様々なチャネルを通じて顧客が来店していました。その中には口コミやテレビ取材など、費用がかからないチャネルもあります。

Etsyもスタート時には、他チャネルとの競合に直面しました。売り手の多くは、すでにAmazonやeBayで商品を販売していました。Etsyは売り手を惹きつけるため、取引手数料を競合他社の約半額に設定しました。Etsyは競合他社に対する優位性をアピールすることが多いですが、この手数料の安さは、サービス開始時に競合他社からシェアを奪い取るのに非常に役立ちました。

現在もEtsyの取引手数料は非常に低いですが、各方面からのプレッシャーに直面しています。Etsyは公開企業であり、株主はより高い利益を求めて手数料を値上げするよう圧力をかけています。また、小さなセグメントに特化して、売り手によりよい付加価値と安い手数料を提示する競合が現れ、Etsyからシェアを奪うかもしれません。

低い手数料設定が機能したもう1つの例としては、TaoBaoが挙げられます。TaoBaoは低い手数料を武器に売り手を集め、それまで中国でトップシェアだったeBayを破りました。

ストックフォトサイトの手数料が高いのは、写真家が自身の写真を販売する他のチャネルがないからです。小売店や独自のオンラインストアで写真を販売することは、それほど効率的ではありません。しかし最近では、マーケットプレイス型プラットフォームの構築コストが下がり、Shutterstockやその他のストックフォトサイト(80%もの手数料を請求するゲッティイメージズなど)は、新興サービスとの厳しい競争に直面しています。 Stocksyは、写真家自身が運営する新しいストックフォトサイトであり、低い手数料を売りに競合他社から写真家を獲得しています。

3.ネットワーク効果

マーケットプレイス型プラットフォームは、「ネットワーク効果」が働きやすい、つまり「その価値が利用者数に依存する」ビジネスです。ユーザーが増えるにつれて顧客の利便性が上がり、プラットフォームの価値は増加します。ストックフォトサイトが高い手数料を請求できるのも、ネットワーク効果のおかげです。販売される写真の数が多ければ多いほど、特定のニーズに合った写真が見つかる可能性が高くなるため、顧客にとっての価値が高まります。

ただし、プラットフォームの性質が

  • 地域密着型
  • 提供されるサービスが画一的

などに当てはまる場合は、ネットワーク効果に限界があります。オンデマンドのライドシェアは、その一例です。Lyftは、はるかに大きく資金の豊富なライバルであるUberがサービスを提供していない地域に進出し、マーケットシェアを奪うことに成功しています。また、ネットワーク効果の理論家であるW. Brian Arthurは、プラットフォームで販売されるすべてのサービスが(ほぼ)同じであれば、ネットワーク効果は競合他社に対して有利に働くことはないかもしれないと指摘してます。売り手の数が限定されていても、顧客のニーズを満たすサービスを常に提供できる場合は、売り手の数を増やしてもプラットフォームの価値を高めることにはなりません。

一般に、ネットワーク効果が大きいほど、高い手数料を請求できます。逆に完全競争の状態に近づくほど、ネットワークから得られる利益は少なくなります。

4. 売り手の属性による差別化

プラットフォーム上の売り手には、毎日取引をするプロもいれば、年に1~2回しか取引しない個人ユーザーもいます。プラットフォームは、すべての売り手に同じ取引手数料を適用すべきでしょうか?

売り手の属性による手数料の扱いは、各プラットフォームにより異なります。eBayはより多くの商品を販売する「パワーセラー」に特典を提供しています。手数料自体は安くはありませんが、パワーセラーは配送料の割引きや、代金未払いに対する補償、各種販売促進のオファーなどを受けることができます。Airbnbでは、スーパーホストに旅行クーポンや優先サポートなどを提供しています。これらの特典は、売り手がより多くの商品を販売することを奨励し、優秀な売り手をプラットフォームに抱え込むために提供されます。

Bill Gurleyは、Booking.comが同じアプローチを使用したと述べています。最初に低い手数料で市場シェアを獲得した後に、収入を増やすために有料のプロモーションサービスの提供を開始しました。

5. 取引単価と取引数

プライシングは心理学です。売り手は、取引毎に手数料をいくら徴収されるかを気にしており、その金額が高すぎると感じるとプラットフォームに対して懐疑的になります。

売り手は手数料率よりも、取引毎に支払う金額を気にします。1回当たりの取引金額が大きければ大きいほど、低い手数料率を望む傾向があります。売り手は、取引手数料を「取引を仲介してもらうためにプラットフォームに支払う手数料」と認識しており、5,000円の取引を2回行うほうが、10,000円の取引を1回行うよりも、プラットフォームに対して価値を感じることが多いのです。Fiverrの取引手数料は20%と比較的高めですが、取引の平均単価は5ドルです。この場合、手数料の金額はわずか1ドルであるため、売り手はさほど不満に思うことはありません。

取引毎に金額が大きく異なる場合は、金額に応じて手数料率を変えることを検討してもよいでしょう。Airbnbがゲストから徴収する手数料は、予約金額に応じて6~12%の間で変動し、金額が大きいほど手数料率は低くなります。このような手数料体系にすることにより、顧客がより単価の高い予約を行うよう促しています。

なお、プラットフォームを始める際には綿密なリサーチを行い、持続可能なビジネスモデルを構築する必要があります。1ヶ月の予想取引数や取引単価など、様々な変数に基づきシミュレーションすることをおすすめします。

あなたのプラットフォームが扱う市場が大きい場合、競争もより激しくなります。これは、手数料を低く抑える必要がある可能性が高い事を意味します。しかし、これは必ずしも低利益を意味するわけではありません。Bill Gurleyは有名なビジネス研究者であるピーター・ドラッカーの言葉を引用してこのことを説明しています。

高い利益率が最大の利益をもたらすとは限りません。利益の総額は、利益率に売上高を乗じたものです。したがって、最大の利益は、最大の売上高を生み出す利益率によりもたらされます。

6. 質 vs 量

こちらの記事で説明したように、プラットフォーム・ビジネスにおける「中抜き」を回避するには、売り手と顧客の双方に多くの付加価値を提供する必要があります。提供する付加価値の高さをユーザーに認識してもらうことで、より多くの手数料を請求することができます。

付加価値を提供し、プラットフォームの品質を向上させる方法の例として、レンタルマーケットプレイスにおける保険があります。売り手が貸し出す商品の破損や盗難が保険によりカバーされている場合、売り手と顧客の双方は、容易に手数料の支払いについて納得します。彼らは手数料を支払うことにより、保険という付加価値を享受できることをはっきり認識できるからです。

売り手の事前審査も、品質を向上させる方法の1つです。一部のプラットフォームでは、資格要件を定めて売り手候補となる人物を審査しています。事前審査は、ベビーシッターや犬のお世話、高齢者の介護など、サービス品質の高さが重視されるプラットフォームで重要となります。

取り扱い商品数を重視して顧客に多くの選択肢を与えるか、品質を重視して売り手は厳選するかを決めましょう。前者の場合、より多くの売り手を集めるために手数料を抑える必要があります。後者の場合は、品質維持のため手数料は高めに設定する必要があります。

同じカテゴリーのプラットフォームであっても、商品数と品質、どちらを重視するかはプラットフォーム事業者の戦略により異なります。家庭料理のマーケットプレイスであるEatWithは、料理のスキルに基づいて売り手を厳選しています。一方、競合他社のVizEatでは、誰でも売り手として登録できます。EatWithは、自らを高品質なプレミアムサービスと位置づけており、VizEatは顧客に幅広い選択肢を提供することを重視しています。どちらのアプローチがより効果的であるかを判断するには一定の期間を経る必要がありますが、これまでのところEatWithが資金調達やブランディングにおいて優位に立っているようです。(訳者注: VizEatは2017年にEatWithを買収し、サービスをEatWithに一本化しました。)

7. 誰が手数料を支払うのか?

マーケットプレイス型プラットフォームには、売り手と顧客という二種類のユーザーがいます。プラットフォームはどちらから手数料を徴収するかを決める必要があります。

投資家のFabrice Grindaは、ほとんどのマーケットプレイスでは買い手を集めるほうが困難であると主張しています。充分な数の顧客がいれば、自ずと売り手は集まってきます。一方、Airbnbのような一部のシェアリングエコノミー・プラットフォームでは、(特にサービス開始当初に)売り手を集めるほうが困難である可能性があります。類似サービスが存在しない状況で、人々に家を知らない人に貸すよう説得するのは大変困難でした。つまり制約は売り手(ホスト)にありました。

Bill Gurleyは、「プラットフォームは、取引における摩擦を、商品と価格の双方から可能な限り取り除く必要がある。高い手数料は摩擦の一種である」と述べています。一般的には、売り手と顧客のうち、集めるのが容易な方から手数料を徴収します。そのため、eBayやOpenTableは出品者から手数料を徴収します。Airbnbではゲストとホストの双方から手数料を徴収しますが、集めるのが容易なゲストの手数料率の方が高めに設定(ゲスト : 6~12%、ホスト : 3%)されています。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事「ツー・サイド・プラットフォーム戦略」の中で著者は、「マーケットシェアを獲得するために、プラットフォームがあえて費用を助成して取引上の摩擦を取り除くことも場合によっては理にかなっている」と主張しています。この戦略を採用した例としてUberが挙げられます。Uberは、競争の激化により手数料を大幅に引き下げ、ドライバーが実際に「稼いだ金額(利益)」よりも多く支払うことでドライバーの離反を防止しようとしました。当然のことながら、この戦略を実行するには多くの資本が必要となります。

手数料はできるだけ安く

手数料のプライシングには多くの要素が影響を与えています。まず10%をベースラインとして、この記事で説明した7つの要素を分析してパーセンテージを調整してください。

プラットフォームを持続可能なものとするために、手数料はできるだけ少なく設定することをおすすめします。Bill Gurleyは、次のよう述べています。「手数料は最終的には販売価格に転嫁されるため、手数料を高く設定すると販売価格も高騰します。ユーザーから選ばれるプラットフォームになるには、価格面で競合他社よりも優位に立つ必要があります。高い手数料は売り手が他のプラットフォームを探すきっかけとなり、あなたのプラットフォームの持続可能性を損なうことになります。」

また、手数料は後から変更しても構いません。最適なパーセンテージを探し当てるため、むしろ変更していくべきです。ただし、値上げはユーザーの離脱に繋がる恐れがあります。最初に高い手数料を適用し、必要に応じて値下げすることをおすすめします。プラットフォームの開始当初に売り手を集めたい場合は、期間限定割引(「最初の6ヶ月は手数料半額」など)を検討しましょう。なお、期間終了後は、本来の手数料率に戻る事は忘れずに売り手に伝えてください。