プラットフォームのバリュー・プロポジションをユーザーに伝える方法

この記事は、Sharetribeが運営するMarketplace Academyに掲載された “How to communicate your value proposition to your users“(著者 : Cristóbal Gracia)を翻訳のうえ、加筆修正したものです。

前回の記事では、MVP(既存のソリューションよりも優れた方法でユーザーの問題を解決する可能性のある最小のソリューション)を構築する際に何を考慮すべきかを学びました。この記事からは、実際にどのようにプラットフォームを設計するのかについて深く掘り下げていきます。

人々のアテンションスパン(ひとつのことに集中する時間)は年々短くなっています。人々からの注目度を競うオンラインサービスが急増している現在、数秒以内にユーザーに強い印象を与えることができなければ、ユーザーがあなたのプラットフォームを利用することはありません。

マーケットプレイスのMVPを構築する際には、新規ユーザーにどのよう第一印象を与えるのか、また、コアとなる「バリュー・プロポジション(顧客が望んでいて、かつ競合が提供できていない自社独自の価値)」をどのように伝えるのかをしっかり考えることが重要です。

「1つのプラットフォーム上で顧客と出品者という異なるタイプのユーザーに対応する必要がある」というマーケットプレイスビジネスの特徴が、バリュー・プロポジションをユーザーに正しく伝えることをさらに難しくしています。多くのマーケットプレイス起業家は、適切なコミュニケーション戦略を見つけるのに苦労しています。また、マーケットプレイスビジネスがどのように機能するかを理解していない従来型の広告代理店では、彼らの力にはなれません。

あなたは創業者として、プラットフォームがユーザーに提供する価値を明確に把握しておかなければなりません。誰をターゲットにしているのか、どのようなコミュニケーションスタイルや美学がユーザーに評価されているのかを理解する必要があります。この記事を読めば、ユーザーへの正しいコミュニケーションの方法を見極めることができるでしょう。

ターゲット層を把握する

私は、自らのバリュー・プロポジションをユーザーに伝える方法を理解していない起業家によく出会います。彼らは、自分たちが解決しようとしている問題や、主なバリュー・プロポジションが何であるかについて一言も言わずに、15分間ピッチをしてくるのです。時間をかけてメッセージをシンプルにし、バリュー・プロポジションの核となる要素を明確にしたピッチを準備する必要があります。自分が明確に説明できないものは、当然他の人にも理解されることはありません。

最初に作ったバリュー・プロポジションが最良のものであることは稀です。そのため、バリュー・プロポジションを伝えるキャッチフレーズは、あなたのサイトが十分なトラフィックを獲得したらすぐにA/Bテストで検証すべきものの1つです。

当たり前の事ですが、異なるタイプの相手には、異なるタイプのメッセージが必要になります。自社をアピールする際に、相手が投資家と共同創業者候補では伝える内容は変わってくるでしょう。それと同じように、相手が顧客と出品者では、あなたのプラットフォームがアピールすべきポイントも異なるはずです。

最初のうちは、最も重要な顧客セグメントであるアーリーアダプター・ユーザーに焦点を当てるべきです。前の記事で述べたように、MVPを立ち上げるということは、「最小限の機能を通じてビジョナリーにビジョンを売り込むのであり、すべての人に提供することではない」のです。ここで言うビジョナリーとは、Steve Blankがアーリーバンジェリスト(リスクを取って新しい製品やサービスを利用する意欲と能力のある顧客)と呼んでいる人々を指します。

バリュー・プロポジションを考える上で、マーケットプレイスの成功事例を研究することは非常に有用です。ここでは BlaBlaCarWallapop を例に挙げて、彼らがどのようにターゲットとなるユーザーにバリュー・プロポジションを伝えているかを見ていきましょう。

ケーススタディ1:BlaBlaCar

BlaBlaCarは2000万人以上のユーザーを誇る、人気のライドシェアサービスです。UberやGrabといったタクシーの代替としてのライドシェアとは異なり、長距離移動をメインとしているのが特徴です。自分の車で長距離移動するユーザーと、同じルートを移動したいユーザーをマッチングするサービスです。BlaBlaCarは2015年に16億ドルの評価額で2億ドルの資金調達を行いました。毎月200万人以上のユーザーにサービスを提供しています。

彼らのランディングページを見てみましょう。

すぐにメインのバリュー・プロポジションである「Find a ride(移動手段を探す)」に気づくでしょう。また、検索フォームのすぐ横にはメインのCTA(コールトゥアクション、ユーザーに行動を喚起させるするためのテキストや画像)である「Find(見つける)」ボタンがあり、希望するルートで利用可能な車を探すことができます。これは、「A地点からB地点までの移動手段を簡単に見つけることができる」という非常にシンプルなバリュー・プロポジションです。

BlaBlaCarはユーザー獲得の方法として、まず誰かの車を予約してサービスを利用してもらい、後日自分が車で移動する際にも乗り合い相手を募るように説得することが重要だと考えているようです。ページの右上には、サービス提供者向けの二次的なCTAである「Offer a ride(移動手段を提供)」が表示されています。

メインのバリュー・プロポジションの下には、BlaBlaCarユーザーの3枚の写真と彼らの意見が掲載されています。これは「人々はサービス提供者よりも、そのサービスの利用者の意見を信用する」という典型的な「ソーシャルプルーフ」のアプローチです。彼らの写真はまた、BlaBlaCarの主なターゲット層、つまり「旅行中にお金を節約したいと考え、ドライバーや他の乗客との交流を気にしない若い人たち」をユーザーに想起させます。

BlaBlaCarは、事業を展開している国ごとに個別のランディングページを持っています。それぞれのページには、その国のユーザーの声が掲載されており、新規ユーザーがBlaBlaCarのサービス内容とターゲットをすぐに理解できるようになっています。ユーザーの声の下では、BlaBlaCarが提供するその他の価値について説明されています。BlaBlaCarで車を探すのは簡単なだけでなく、お金の節約にもなります。また、保険が提供されているので、安心して利用できます。BlaBlaCarはこれらの提案を、顧客とサービス提供者の双方に以下のような形で明確に提示しています。

  • サービス提供者(運転手)向け:移動の際の交通費の削減
  • 顧客(乗客)向け:安い移動手段の提供

私はライドシェアサービスのバリュー・プロポジションを顧客とドライバー双方に伝える際に、BlaBlaCarの以下の写真をよく用います。

BlaBlaCarは、他にも様々な方法で自らの価値をユーザーに伝える努力をしています。ウェブサイトのメインカラーには明るい緑と青を採用し、環境へのポジティブな影響を表現しています。ブランド名と遊び心のあるロゴは、見知らぬ人と相乗りすることのポジティブな社会的側面を若年層のユーザーにアピールしています。なお、このようなデザイン戦略は、すべてのマーケットプレイスで通用するわけではありません。Lending Clubのようにお金を扱うマーケットプレイスは、銀行のように信頼できる存在でありたいと考えているため、落ち着いたブルーとグレーの色を用いています。

これまでにBlaBlaCarを何度か利用して同乗者と話しましたが、みんな最初は交通費の節約や利便性のために利用したと言っていました。しかし、一度利用した後ではBlaBlaCarが持つ他の付加価値がより重要になったそうです。ドライバーや乗客がBlaBlaCarを利用し続けているのは、移動中の会話を楽しんだり、他の乗客と友人関係を築くこともできるからなのです。このソーシャルバリューはBlaBlaCarにとって顧客をつなぎ止める重要なファクターですが、彼らはコアのメッセージとしてはそれを強調していません。ソーシャルバリューは2回目以降の利用を促しますが、最初にユーザーを引きつけるバリュー・プロポジションは利便性、信頼性、価格であることを、BlaBlaCarはしっかり理解しているのです。

ケーススタディ2:Wallapop

スペインのフリマアプリであるWallapopは、マーケットプレイスのバリュー・プロポジションの伝え方を考える際の参考となるもう一つの例です。Wallapopは、ユーザーが近所のユーザーと商品を売買することを可能にしています。アイデアはそれほど独創的ではありませんが、その実行力は見事です。彼らは現在、スペインで最も有望なスタートアップの一つと考えられており、約10億ドルの評価額で資金調達を行ったと噂されています。

Wallapopがローンチしたときには、同じような位置情報を用いた類似アプリはたくさん存在していました。なぜ彼らは成功することができたのでしょうか?その重要な要因の一つは、彼らの優れたニッチ・マーケティング戦略にありました。

2014年4月に放映開始したWallapopの最初のテレビCM(下の動画を参照)は、ニッチな視聴者にバリュー・プロポジションを伝える傑作です。当時、彼らは何千人ものユーザーを抱えており、どんな種類のCMでも制作できるだけのリソースを持っていました。彼らは幅広い層のユーザーをターゲットにすることを選択することもできましたが、代わりに1つのセグメントだけに焦点を当てました:若くてクールな「ヒップスター」です。Wallapopは、このセグメントがオフラインのマーケットプレイスで中古品を売買することに最も積極的であることを認識していたのです。これらの人々がWallapopにとって完璧なアーリーバンジェリスト(リスクを取って新しい製品やサービスを利用する意欲と能力のある顧客)であることを知っていたのです。Wallapopは一気にマスマーケットに訴求するのではなく、まず1つのニッチで成功し、その後拡大していくことを選択して成功を収めました。

この遊び心あふれるビデオは、ターゲットとなる視聴者に合わせたナレーションや音楽で構成されており、次の3つのバリュー・プロポジションを提示しています :

  • ジオロケーション: 近所で出品されている商品を探したり、自分が探しているものを投稿できます。
  • 経済的価値:ターゲット層が好むヴィンテージグラスやバイクなどの商品をお得に購入できます。
  • 社会的価値:Wallapopを通じて、近所の人と知り合うことができます。

バリュー・プロポジションを作ってみよう

以前の記事でおなじみの例(パーソナルトレーニングのマーケットプレイス)を使って、バリュー・プロポジションを作成してみましょう。サービスの提供者であるトレーナーに対するあなたのコアメッセージは、顧客や売上の増加に関するものである可能性が高いです。一方、顧客にとっては、適切なトレーナーの見つけやすさに焦点を当てた方が良いでしょう。

マーケットプレイスの利用者のほとんどはトレーナーではなく顧客です。そのため、メインランディングページの最も重要な機能は顧客獲得となります。トレーナーの獲得は、一人ずつコンタクトをとり参加を呼びかける方が効率的です。つまり、主なCTA(コールトゥアクション)は顧客に向けられたものであるべきです。また、パーソナルトレニーングにおいて最も有望なセグメントは「30歳から50歳までの裕福な専業主婦」であることがわかったとしましょう。このセグメントの顧客はお金を節約することについてはそれほど気にしていませんが、サービスの質と時間の節約については敏感です。

まずは「あなたにぴったりのパーソナルトレーナー、見つかります」などのキャッチコピーをランディングページの一番目立つ場所に配置するところから始めましょう。なお、ターゲットユーザーのニーズをさらに掘り下げた上で、キャッチコピーを作成することもできます。「30歳から50歳までの裕福な専業主婦」が主にシェイプアップのためにパーソナルトレーナーを探しているのであれば、「パーソナルトレーニングで健康的にシェイプアップ」のようなキャッチコピーもよいでしょう。

キャッチコピーの後には、BlaBlaCarのケースのように大きなCTA(行動への呼びかけ)を配置すると良いでしょう。ユーザーは自宅や近所で利用できるパーソナルトレーナーを探すわけですから、CTAの内容はユーザーに位置情報を入力してもらうことなどになります。

デザインの面では、一般的に大きな画像を配置するのが効果的です。この場合、あなたのターゲットセグメントに属する人がジムでトレーニングをしていて、トレーナーが彼女に指示を与えている写真などがよいでしょう。適切な写真がない場合は、多くのストックフォトサイトが手頃な価格で高品質の写真を提供しており、性別、民族、年齢などに基づいて写真をフィルタリングして、マッチする写真を見つけることができます。個人的にはStocksyをおすすめします。

最初のユーザーができたら、すぐにマーケットプレイスの利用に関する「お客様の声」を掲載しましょう。理想的には、彼らの経験が、あなたがターゲットセグメントに属するユーザーに伝えたいストーリーと一致していることが望ましいです。

顧客へのバリュー・プロポジションの下には「オンラインで集客、登録無料!」など、トレーナーにとってのメリットも提示します。また、ページの右上などに、トレーナーが会員登録するための二次的なCTAを設けることもできます。

もう一つの選択肢として、トレーナー向けランディングページを別途用意することも考えてみましょう。ランディングページを分けることにより、トレーナーに向けて明確にバリュー・プロポジションを提示できます。また、トレーナーとしての会員登録を促すリスティング広告を出稿する際には、遷移先としてトレーナー向けのランディングページを設定することにより、コンバージョン率の向上が期待できます。

まとめ

この記事では、あなたのプラットフォームのバリュー・プロポジションをユーザーに正しく伝える方法についてお伝えしました。これは、ユーザーにあなたのプラットフォームのリピーターになってもらうための重要な第一歩です。

ランディングページに掲載するキャッチコピーやデザインだけでは十分ではありません。サポートメールからエラーページに至るまで、ユーザーへのすべてのコミュニケーションが同じスタイル、トーンで統一されていることを確認する必要があります。

以降の記事では、マーケットプレイスのデザインに焦点を当てていきます。ここでいうデザインとは、見た目のよいウェブサイトやアプリを作るということではありません。スティーブ・ジョブズはデザインについてこのように話しています:

「デザインとは、単に見た目や感覚のことではない。それがどのように機能するということである」

あなたのマーケットプレイスをユーザーのために機能させるための方法について掘り下げていきましょう。